久しぶりに面白いドラマを見つけてしまった!と興奮冷めやらぬ感情でキーボードをたたいています。
異国っぽいネオンライクなタイトルロゴと、色鮮やかな外国ごはんに興味をそそられてのぞいてみると、今までにない、新感覚の刑事モノが展開されていて、あっという間に魅了されてしまいました。
そのドラマは『東京サラダボウル』!!
NHK ドラマ10枠、毎週火曜日の22時から放送中です。
ちなみにAmazonプライム・ビデオでも観られます。私はアマプラで一気見しました!
今回は『東京サラダボウル』の魅力をこれでもかと言わんばかりにお伝えします。
東京サラダボウルのあらすじ
舞台は多文化共存の街、東京。
東京には約66万人もの外国人が暮らしており、多様な価値観や文化が渦巻いている。
その様相はさながらサラダボウルのようで、人々は国の境を行ったり来たりしながら交流を深めている。
そんな街で、国際捜査担当の風変わりな刑事・鴻田麻里(奈緒)とクールなリアリストである警視庁の中国語通訳人・有木野了(松田龍平)が出会い、様々な事件を通して外国人が異国で生きる葛藤に出会っていく物語。
大麻リキッドを大量に所有していた女子留学生や、自転車のバッテリー窃盗に手を染めたレストラン従業員が、どうしてそのような道に迷い込んでしまったのか、社会の闇と繋がってしまった彼らの暮らしの背景を読み解いていく。
そこには、異国で生きる彼らの“困りごと”に目を付けた裏社会の住人が、善良な住人であった彼らを闇に導く複雑な構図があった。
ひとりひとりの“言葉”を目印に、真実を見つけ出していく、新感覚刑事ドラマ。
松田龍平がはじめから可愛い
このドラマの面白さの鍵を握るのはやっぱりメインペアの鴻田とアリキーノ(鴻田が付けた有木野のニックネーム)の掛け合い。
愛嬌たっぷり、チャーミングが過ぎる笑顔で終始場面を明るくしてくれる鴻田と、生真面目で無骨な雰囲気なんだけどなんだかんだ面倒見がいいアリキーノのペアが可愛い。
そう、可愛い。なんだかふたりが可愛いのです。
アリキーノを演じる松田龍平といえば、人とかかわるのがちょっと苦手で、ちょっと気難しくて、ちょっととっつきずらくて、でもなんだか憎めない、そんな真面目な人の役をやらせたら右に出る人はいないんじゃないかってくらいの陰キャ系ツンデレイケメン代表ですよね。(決め付け)
だから、たいてい松田龍平が演じるキャラクターは、最初は冷たくて、あんまり何考えてるかわからなくて、主人公にも心を開かなくて、って感じのことが多い印象だったのですが、今回もその王道を余すところなく発揮してはいるものの、なんと今回はほんのり最初から優しいのです!
初対面かつ年上の有木野にため口×魅力的なニックネームでぐいぐい距離を詰めていける鴻田のチャーミングな年下キャラのお陰か、アリキーノは、割と序盤からちょっと面倒臭そうにしながらも、鴻田の想いを汲んで助力してくれるし、ごはんに誘ったら必ず来てくれるし、なんとピンチになったら体を張って助けてくれます。(インテリイケメンが武闘派もいけるとなったときの格好良さはすさまじいパワーですよね。そしてその直後の「鴻田さん、大丈夫ですか」が通訳人のトーンに戻っているところがほんとキュンなんですよ~)
鴻田がドラッグストアに潜入していると聞いて、わざわざお客さんの振りして見に来てくれるエピソードがあるのですが、めちゃくちゃ可愛くないですか、アリキーノ。
来てくれてありがとうとお礼を言う鴻田に、「いや、わざわざ来てないですよ」のお決まりのセリフも可愛い。わかりきった照れ隠しの嘘がこんなに可愛い。美しいツンデレ。ずっと見ていたい。
さて、そんなふたりの関係は、恋愛を匂わせながらも、可愛い妹に振り回される感じくらいのほどよい距離感で、安心して見られます。
人の懐にするりと入り込むコミュ力おばけな後輩(ため口だけど失礼な感じはしなくて、むしろ気遣い力はめちゃくちゃある)と、優しくてミスを責めない先輩(ただし闇が見え隠れ)が令和らしいペアだなあと新鮮に楽しんでいます。
凝り固まった礼儀正しさを飛び越えていった先のコミュニケーションが、ふたりらしい信頼関係の下構築される様子がとても素敵です。
この空気感、ぜひ味わってください。
社会問題とエンタメのバランスが絶妙
刑事ドラマなので、描かれるテーマはなかなかハードで、毎回なんらかの犯罪と向き合い、さらに外国人居住者の置かれている困難な状況等も織り込まれていきます。
アニメ好きの女子留学生が騙されて大麻リキッドを吸わされてしまったり、出稼ぎの不法滞在者が母国へ帰るために誘拐事件に巻き込まれてしまったりと、外国人に限らず、犯罪は日本の日常のすぐそばに潜んでいるのだということにハッとさせられます。
そんな重たい話題を茶化すことなく、しっかりと描いていくのですが、それでもお説教くさくない軽快なエンタメにまとめられていて、毎話楽しく観られるバランス感覚はさすがと言いたいです。
逐次通訳の重要性
アリキーノは外国人の取り調べの際に言葉を通訳する中国語の通訳人なのですが、通訳のお仕事の世界にも少し触れることができます。
取り調べの際に実施される通訳は、「逐次通訳」というもので、言い間違いや言葉の順番まで変更せず、一言一句そのまま訳す仕事なのだそう。
同時通訳では、相手の言いたいこと、主旨をしっかり訳出し、相手に届けることが大切ですが、逐次通訳は言葉ににじむ感情やニュアンスまで正確に訳すことで、相手の言ったことを正確に聞き取ることが大切なのだとか。
取り調べでの発言は、時に人の人生を左右する「言葉」となる重要なもの。通訳人の勝手な解釈で要約したり、解釈を足すことなくありのままを聞き取ることが大切なのですね。
その言葉ひとつひとつを大切に、取りこぼさないように取り組むアリキーノのひたむきな姿も魅力的です。そして、言葉を受け取ったら、その伝えられたメッセージを無駄にせずにひたむきに行動する鴻田との掛け合わせが、物語を引っ張って行ってくれます。
今まで、通訳の種類を意識したことがなかったのですが、目的に合わせて方法が違うことを知れたのは面白かったです。
ドラマを通じて、いろんなお仕事の一面を見ることができるのは楽しいですね。
さいごに
イギリスに留学していたとき、私自身も「外国人」になる経験をしました。
外国での暮らしの刺激的な楽しさと、不慣れな生活による不安の両方を感じながら過ごしていたことを思い出しました。
国を行き来することは大変なことですが、フランスパンに紅白なますや野菜、鶏肉やレバーペーストなどを挟んだサンドイッチ「バインミー」のような新しい食文化をはじめとする多様な文化が、たくましく国を行き来する人々によって生みだされるのって素敵だなと思います。
“多様性”がテーマというと堅苦しく感じますが、東京サラダボウルのように、色鮮やかで軽やかなエンターテイメント作品を通して、少し深いテーマにも心を寄せてみるのもよいものかもしれません。
最終回まで楽しみたいと思います。